○全国平均では、全用途平均が5年連続の上昇となり、上昇幅も4年連続で拡大し上昇基調を強めている。用途別では、 住宅地は3年連続、商業地は5年連続、工業地は4年連続の上昇となり、いずれも上昇基調を強めている。
○三大都市圏をみると、全用途平均・住宅地・商業地・工業地のいずれについても、各圏域で上昇が継続し、東京圏及び 大阪圏では上昇基調を強めている。
○地方圏をみると、全用途平均・住宅地は2年連続、商業地・工業地は3年連続の上昇となり、いずれも上昇基調を強め ている。地方圏のうち、地方四市(札幌市、仙台市、広島市及び福岡市)では全ての用途で上昇が継続し、上昇基調を
強めている。地方四市を除くその他の地域においても、全用途平均・商業地が平成4年以来28年ぶりに上昇、住宅地 は平成8年から続いた下落から横ばいとなり、工業地は2年連続の上昇となった。
としている。
この価格変動は、あくまで1月1日時点であって、新型コロナウイルスの影響などまだ、対岸の火事程度しか考えていない時点での価格体系である。
それから3か月経ち、この発表の頃には、日本の多くの都道府県で新型コロナ感染拡大が止まらない。世界的にはパンデミック(大流行爆発)状態にある。特に欧米に感染爆発したことで、医療崩壊、渡航制限、都市封鎖・・・等これまで耳慣れない異常事態が続いている。
これが、短期的に収束、都市機能回復すれば大騒ぎにはならないが、治療薬やワクチンが開発され、感染が収束するまで、1.5年~2年かかると言われている。ウイルス禍から身の安全を確保することが何よりも重要であるが、その次に大切なものは、財産であり、それは経済の営みがあればこそである。その見通しが立たないまま時が進むことは、さまざまなところに大きな影響、いや甚大な影響を及ぼすことになる。
1.訪日客が激減し、ホテル等の宿泊施設、観光バス、観光地や都心部の外国人向け各種店舗等の観光産業が大打撃、国際便の大幅縮小で航空関連産業が大赤字。
2.国の内外を問わず、様々な産業構造でサプライチェーンが前提となっている自動車産業や建設業界、その他において、中国からの部品の調達が滞り、新車が未完成のままであったり、住宅設備でトイレ、バスルーム、ドア設備、レンジフード…等々、部材がないことで、新築建物の引渡しができない債務不履行状態。
3.クラスター集団による感染拡大を防ぐため、3密(密閉、密集、密接)を伴う各種イベントの自粛により、プロスポーツ界、音楽界、演芸界、講演会等の中止、延期に伴うイベント関連の打撃。
4.そして何といっても東京オリ・パラの一年延期である。
5.最終段階として、現段階では発令されていないが、非常事態宣言が発令されれば、経済界のほとんどの分野で少なからず打撃を受ける(ヒト・モノ・カネの停滞と国の補償)のは間違いない。
ところで、地価は、平成20年9月のリーマンショック後、再び急激な下落となり、平成25年以降、ようやく大都市圏を中心に横ばいから上昇し、冒頭の地価変動になっていったが、その要因として、アベノミクスの金融及び財政政策により、カネの流れが株や不動産投資に向けられたこと、何といってもインバウンド効果により、東京や大阪の中心部、さらには大都市圏へと訪日客の増加とともに商業地地価を押し上げたこと、さらにそれ以前から都心回帰としてそれまでニュータウン等に住んでいた人たちが、子育てを終え、便利な都会に住み替え始めたため都心のマンション需要が惹起したこと、インバウンド効果が、爆買い傾向から体験型訪日客にシフトし、ホテル等の宿泊施設需要が逼迫したのが主な要因となっている。(タワーマンション・ホテル用地・インバウンド関連店舗敷地の高騰)
最も顕著な地価公示を挙げると、大阪道頓堀にある公示地(旧クリスタ心斎橋)で、H27→R2の5年間で、701万円→2870万円と4倍強の上昇である。
賃料の上昇は当然としても、投資家の爆買いによるものとしか考えられない。これは、訪日客が昨年3000万人を超え、その伸び率の多くは関西・大阪で、そのメッカである観光スポットがこの辺りである。国は、今年2020年は東京オリ・パラがあり、4000万人を目論んでいたし、それを疑う人も少なかったであろう。それを見込んだ投資家の先行買いで、実際取引もさらに高いものとなっている。
ところがである。日韓関係が最悪の状況となり昨年9月頃から韓国からの訪日客が大幅に減り、10月からは消費税が8%→10%に押し上げられた。すでに国民は織り込み済みとして冷静に受け止めていたが、やはり消費は徐々に落ち込んでいき、銀行も追加的な貸し付けを抑制したところに、今年に入って新型コロナ感染である。
株価は、大幅に下がり、訪日客も中国、韓国、欧米等、双方の行き来が封鎖されてしまった。
地価はどうなるのか?自明の理であろう。首長の自粛宣言の下、夜のネオン街は静まり、インバウンド効果の火が消え、国内外のヒトが街からいなくなる。そうすれば、売り上げのない(少ない)テナントは家賃を払えず、そのうち撤退を余儀なくされ、空室率が高まり、家賃を下げても、テナントは入らない状態が当面続くことになる。
投資が投機物件に変節するとハイリスク・ハイリターン物件は、きわめて危ういものとなる。
おそらく、「アベノミクス」がもたらした地価上昇は、「アベノマスク?」により閉じてしまうと考えられる。すなわち、7年前の地価に逆行するのではないかと・・・。
仮に、今回の新型コロナウイルス禍が収束しても、その後の経済全般の立て直しは1国の問題ではなく、世界レベルの問題である。2年で概ね収束しても、それから3~5年は、令和2年1月1日時点には戻らないであろうと推測される。
経済大国となった中国は、経済成長が5%台から2%台に落ち込むという試算もある。
早晩中国も安定経済となり、これまでのようなインバウンド効果は望めないであろう。
石油価格も下がり、株価も下がり、ドルも下がれば、トリプル安となって平成3年バブル崩壊の時と同じ状況に陥るかもしれない。
そうならないためにも、G7やG20の各国首脳が総力を結集して、この新型コロナを収束させ、一刻も早い世界経済の安定を計るように願いたいものである。就中、安倍首相には、小手先の対処療法ではなく、未来を見据えた抜本的な大ナタを振っていただきたい。
今のままでは、地価は間違いなく商業地を中心に壊滅的な下落が始まると確信する。
以上
(令和2年4月1日執筆)