⑤インバウンド効果による大阪の地価動向

《昨今の地価動向》
平成20年9月のリーマンショックにより、それまでITミニバブルと言われていた緩やかな地価上昇は再び奈落の底へ向かいましたが、平成25年あたりから、落ち着きを取り戻し、26年以降は、ミナミの心斎橋や道頓堀、千日前、御堂筋・・・といった繁華商業地を中心に地価が上昇し始め、やがて大阪駅周辺にも波及し、平成31年まで地価上昇が止まっていません。
この原因は何と言っても、インバウンド効果によるものであると言ってまちがいありません。
では、インバウンド効果なるものはどのようなものなのか考えてみましょう。

《インバウンドとは》
外国人が主として観光目的で訪日することをいいますが、2014年に訪日客は1千万人を超え、翌年以降、急激にその数を増やし、2017年2870万人、2018年3120万人となり、2020年に国が目標としていた4千万人が達成されそうな勢いとなっています。
中でも、大阪は、関空にLCC(格安航空)の滑走路を持つようになったこと、ビザ発給が簡略化されたこと、東アジア諸国の経済成長が順調で富裕層が増えたこと等から、中国、韓国、台湾といった東アジアから、爆買いツアーや、最近では体験型ツアーなどで京都や奈良、大阪のUSJ、日本の食文化に触れる等、さまざまな観光目的で来阪し、インバウンドによる伸び率が、全国でもっとも多いです。
また、リピーターも多く、大阪人の進取の気性や人懐っこさや人情味あふれるサービスで、ドラッグストア、日用雑貨店、ブランドショップ、日本食等の飲食店を中心に活気がみなぎっています。2020年には東京五輪、2025年には大阪万博、さらには、大阪舞洲にカジノと大型リゾート施設の誘致活動が進められており、当分この効果は大いに期待されています。

《インバウンド効果による大阪の地価》
インバウンドという言葉が聞かれだしたのは平成26年頃からで、LCCで関空に着き、バスや電車で大阪中心部に、あるいは大型客船で大阪港に就航、そこから爆買いバスで中心部へと東アジアの富裕層がドラッグストアや量販店で日本製を買い漁るという所謂「爆買い」の様子がニュースで紹介され、大阪駅やなんば駅には、如何にも重そうなキャリーバックを引きずる姿をみることが当たり前の光景となっていきました。
この頃から、インバウンド効果による地価上昇が、心斎橋、道頓堀、戎橋、なんば駅周辺に波及し、ほぼ同時期に大阪駅前の百貨店、大型複合店舗のあるエリアにも波及しました。
それまでの大阪商業地は、東京一極集中により、大阪に本社がある上場企業も東京へ移転し、恒常的な地盤沈下の上に、リーマンショックから立ち負えなくなっており、百貨店の増床などでオーバーストア化となっていたが、これらの懸念がすっ飛ぶほどに訪日客が大阪を訪れました。
さらに、訪日客の短期滞在型のホテル需要が始まり、大阪市内でマンション用地又はホテル用地になる面大地は、かつてのバブル時期を彷彿させるほど28年以降地価上昇が続くこととなりました。
爆買いエリアの店舗ビルは、空室率が0近くになり、賃料の上昇も表面化、超低金利政策をとり続ける国の政策に呼応するように国内外からの投資家による不動産投資が集中し、地価上昇は、大都市圏へと拡散していきました。
大阪商業地の地価トップはそれまでキタが君臨してきましたが、平成30年の地価公示から、ミナミ心斎橋にその座を譲り、実需とバブルの境目のところまで上昇し続けています。

《今後の大阪の商業地の地価動向》
2020年には、訪日客は4000万人となる目標数値は、今のところ達成されそうですので、インバウンド効果のあるエリアの地価上昇は今しばらくは見込まれるというのが、極めて正常な予想です。
しかしながら、土地の価格を形成する要因は、極めて多岐にわたり、しかもそれは、個々の土地に対して同質に影響を与えず、主従軽重があり、さらには常に変化の過程にあるのです。以下の要因シナリオが特に問題なければ、前述の極めて正常な予想は、予測となっていくでしょう。インバウンド効果以外の強いプラス要因は、見当たりません。

1. 少子高齢化は確実に深刻化していくとともに都心回帰現象は、都心の地価の更なる上昇により、分譲マンション価格も上がるため、たやすく都心へ移り住めない状況が出てくること。

2. 不動産鑑定評価基準に「超過利潤は競争を惹起し、競争は超過利潤を減少させ、終局的にはこれを消滅させる傾向を持つ。」と競争の原則について述べている通り、今、大阪を中心にホテルの超過利潤を求めて次々とホテルが建っていますが、ホテル用地はもはや採算が取れるギリギリの高値で取引されており、超過利潤は相当な範囲で消滅しつつあること。

3. カントリーリスクというおよそ、大阪の地価動向に影響を及ぼさない要因であっても、それが、インバウンド効果の妨げとなるようなリスクが発生した場合、たちどころに商業地価は冷え切ってしまうこと。
特に、米中貿易戦争は、世界の経済の覇権争いが激化しており、地理的位置が、両大国の間にある日本のスタンスによっては大打撃を被る可能性は否定できません。

4. 2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2025年の大阪万博、カジノを含むIRの誘致等、景気を押し上げるイベントが続きますが、日本人の消費行動が弱く、10月の消費税10%に引き上げとなるとさらに消費が落ち込み、インバウンド効果が薄い所或いは影響のないところは、完全に地価上昇は止み、リーマンショック後の状態まで落ち込む可能性があります。

以上からは、大都市を中心とした今の地価上昇をもたらしたのは、インバウンド効果と超低金利政策のみであると言えます。これらを抑制する何らかの政策次第では、リーマンショック以来の大幅な地価下落を招くおそれがやってくるのではないかと思います。
もはや不動産は、持っているだけで安全な資産とは言えない時代となっています。
以上

(令和元年5月17日執筆)

2019年05月17日