⑩2020.7.1相続税路線価発表について

日本経済新聞2020年7月1日の夕刊の第一面をみると、“景況感11年ぶり低水準”“日銀6月短観マイナス34”
“コロナで停滞鮮明”と見出しがある、そのとなりで、“路線価5年連続上昇”1.6%プラス コロナで減額修正も“とある。


一般読者には、経済状況と地価動向は連動しないのか?と観るかもしれない。
多少不動産に明るい読者ですら、なんか変だと?と感じるかもしれないし、評価している不動産鑑定士らに不動産市場の実態がわかっているのかと疑問を持つかもしれない。
しかしながら、こういった路線価や地価公示、地価調査等の公的評価業務に携わっている不動産鑑定士は平然と記事が読める。
その理由には2つある。

①タイムラグ
路線価は、毎年1月1日時点の地価公示価格を基に主要路線価(標準地)の鑑定評価を行い、公示価格及び主要路線価の価格から、その他の路線価を敷設して、通常7月1日に一般公開されている。
ために、コロナの影響が出始めた2月以降の経済情勢は考慮外であること。いわゆるタイムラグと呼ばれるもので、経済事情の急激な変化では顕著となる。
さらに、取引事例情報は、入手できる直近の数か月前までであり、地価変動率を乗じて1月1日時点の価格に時点修正するため、過去のデータを基とした推定値となる。
ここでの推定値は、原則としてそれまでの変動率と同程度が続いているものとしての修正であるため、経済情勢が比較的安定期には有効であるが、コロナ禍のような突発的な変化には対応できていないシステム上の問題がある。
次の公的評価の発表は、9月下旬に発表される地価調査であるが、これは、毎年7月1日時点の価格を発表するもので、概ね4月までの取引事例を採用することとなるが、緊急事態宣言や世界中がパンデミック状態の為、不動産取引は買控えで事例数が激減し、データが集まらないため、9月下旬の発表段階でもコロナ禍による地価への影響を十分推し量ることができないであろうと推測される。
実態把握ができるのは、来年1月1日の地価公示価格あたりになるだろう。急激な変化時にはこのタイムラグはもどかしく思われる。

②価格形成要因
ある経済事象が起こっても、すべての不動産価格に均一に影響を及ぼすのではなく、影響を及ぼす分野・地域・範囲等があり、全く影響の及ばないところもある。
不動産の価格に影響を及ぼす要因、すなわち価格形成要因とは、一般的要因、地域要因、個別的要因に分けられ、それらの相互作用により価格が形成されているのである。したがって、短観指数の良否で一様に地価変動に影響を及ぼすことにはならない。
平成20年9月のリーマンショック後の地価の大幅下落は、それまでの過熱気味の不動産投資対象を中心に大幅下落したが、それは主として大都市圏を中心としていたため、大都市を擁しない地方都市にはさほど下落しておらず、むしろ少子高齢化の影響で徐々に下落してきた。
その後、第2次安倍内閣のいわゆるアベノミクスにより、超低金利政策とインバウンド政策により、インフレ率年2%目標と観光立国を旗頭に進めてきた。残念ながら超低金利政策は、目標が達成されず、副産物として、外国からの投資マネーを含め、カネ余りから株価と不動産投資物件の上昇を招いた。
一方、インバウンド効果は、年々訪日客数が増え、2019年度は4千万人を見込んでいた。特に関空から大阪や京都といったところへ、大挙して外国人が押し寄せ、インバウンド関連の観光スポットや店舗・ホテル用地は地価上昇がリーマンショック前の水準まで戻しているところがある。路線価の価格時点までは…。
なお、地方都市では相変わらず下落の幅は少なくなったが、上昇に転ずるところまではいかない。
以上



これは日本経済新聞2020.7.1夕刊に掲載された、当職のインタビュー記事の抜粋




(令和2年7月2日執筆)

2020年07月03日